恋口の切りかた

 【剣】

「円士郎様のために着物を縫いたい?」

円士郎が好きだと言ってくれた日から数日後、

私と並んで町を歩きながら、与一は目を丸くした。

「おつるぎ様がかい?」

「うん……」

私は顔が真っ赤になるのを感じながら頷いた。


雪丸が、りつ様に着物を縫ってもらったと嬉しそうに言うのを聞いて、私が思いついたかんざしのお礼が、円士郎のために着物を縫うことだった。

円士郎はあんなことを言って、結局あの時は話がうやむやになってしまったけれど……


思い出しただけで、

柔らかくて温かい感覚が唇に蘇って、心臓がどうにかなりそうなくらい騒いでしまう。


でも、

私はちゃんとお礼がしたかった。


「着物の柄ってよくわからないから……選ぶの、手伝ってもらえないかな……」

うう、恥ずかしいよ。

顔を上げることができなくて、うつむいたまま、私は言った。


今日は着物の生地を選ぶために、一緒に反物屋に行ってもらおうと与一を頼ったのだった。


そうしたら、はああ、と大きな溜息が降ってきて、

「なあんだ。わざわざ鈴乃森座までこの与一を訪ねてきて、一緒に来てほしいなんていうから期待したら──よりにもよってそんな頼み事かえ。
何だってこの俺に……」

「だ、だって……その……」

私はうつむいたまま、他の知り合いの顔を思い浮かべた。
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