恋口の切りかた
「……あんまり眠れなかったよ。レン──兄上は?」

「眠れるわきゃねーだろ……」

ぶっきらぼうにそう答える漣太郎は、
目の下に凄いクマを作っていた。




やっぱり、変な気分。



今まで友達だったのに、


「急に兄上って……へへ、なんだかおかしな感じだよね」


自分の席に座りながらおれが言うと、

漣太郎は立ったまま、マジマジとおれを見つめた。


「まあ、それもあるけどよ」

「……?」

「オレにはお前が女だったってことのほうが大事件だ」


大きくため息をついて、漣太郎も席に座った。


昨夜初めて知ったのだけれど、
結城家でもおれの家と一緒で、
ご飯は家族そろってから食べるらしい。

でもおれの家と違って、
ここでは両親と子供の席は離れている。


離れた場所にある父母の席にはまだ二人の姿はなく、

平司や雪丸もまだで、

座敷にはおれと漣太郎しかいない。
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