恋口の切りかた
「えー? なんだろ?」

私は首を捻って、

うふふ、とおひさがまた笑った。

「おつるぎ様」

風佳が固い声で言った。

「おつるぎ様は、円士郎様と生涯添い遂げたいとお思いですか?」

「え……?」

向けられた思いのほか真剣な眼差しに、私は少し面食らって、

「そうできたら……嬉しいけど……もう、いいの」

「もういい、とは?」

「諦めることにしたから。
今日の夜……エンと話して、きっぱり忘れようと思うの」


私は部屋に大事にしまってある着物を思い浮かべながら微笑んだ。


「諦められるのですか? 忘れられるのですか?」

風佳はいつになく真面目な目で私を見据えて訊いた。


その問いに、

ずきん、と胸が痛んだけれど、


「諦めなくちゃいけないから。忘れなくちゃいけないから」

私は答えて、唇を噛んだ。

そうしないと、今にも涙をこぼしてしまいそうだった。


そんな私の顔を風佳はじっと見つめて、

「……そうですか」

何か、決意を秘めたような声でそう言った。
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