恋口の切りかた
「待ちな!」

怒鳴りながら窓に駆け寄った霧夜が下を見下ろして、チッと舌打ちした。



マノ、ダンゾウ……?



俺はどこかで聞いたようなその名を繰り返して、


霧夜が窓辺に背を預けて溜息を吐き、口を開いた。


「あの女が、前に話した殺し屋の──『国崩しの断蔵』なんだよ、円士郎様」


俺は霧夜の口に上った名前に目を剥いた。


国崩しの断蔵って──


「女だったのかよ!?」


初耳だぞ、そんなの。


「ああ、言うの忘れてたぜ」


霧夜が散切り頭をばさばさと掻いて、もう一度大きく嘆息した。
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