恋口の切りかた
六、夢の終わり
【剣】
綺麗な女の人だった。
私とはまるで正反対で、大人っぽくて……
いつか霧夜が、
「そりゃァ、色気のある女がいいに決まってらァな」
と言っていたのを思い出した。
ああいうの、色気のある女の人って言うんだろうな。
円士郎は格好良くて、
武家の間の評判はともかく、
町では人気があって、色々な女の人と一緒にいるのくらい知っている。
今さら私、何びっくりして逃げてるのかな。
でも……円士郎も、やっぱりあんな綺麗で大人びた女の人がいいんだろうな。
師走の白い空からは、雲の欠片みたいな私の大嫌いな白い塊がふわふわ落ち始めて、
体も心も凍えてしまいそうで、私は泣きながら走って──
また、いつものように河原に来てしまった。
ごろごろ転がっている石ころの上にしゃがみ込んで、冷たそうな十二月の川を眺めて、
円士郎は私のことを好きだと言ってくれたけれど、
急に自信がなくなった。
私なんか、
こんな男の格好してるし、
色気なんて全然ないし、
きっと彼から見たら子供なんだろうし──
ちゃぽん、と
そばの石ころを拾って水面に投げ込んだ。