恋口の切りかた
かあっ、と頭に血が上って、

私は持っていた石を清十郎に向かって投げつけた。


「おっと」

清十郎が避けて、石は地面の他の石の上に落ちて硬い音を立てた。

「危ないな。八つ当たりするなよ」

「う……うるさいっ」


この人の思い通りに動いて傷ついたことが悔しくて、

私は水面に向けていた怒りの矛先を転換して、そこら中の石をぽいぽいと清十郎に投げ放った。


「嫌い! あなたなんか大嫌いっ! 何であんなもの見せるのようっ」


空気を切る私の投擲を、清十郎はひょいひょいと軽くかわしながらこちらに歩いてくる。


「寄るなっ! こっちに来るなっ!」

「悪いのは俺じゃない。お前の好きな円士郎様だ」

「う……うるさいっ」


ずっと泣き叫んでいたせいで、私の胸はひくひくと痙攣し始めた。


「エンは……エンは、悪くないもん……っ」


あんな場面を目の当たりにしたばかりなのに、口からはそんな言葉が飛び出して、


「なっ……何なの……っ、私にはエン……しか、いない……のにっ、エンが他の人と一緒にいても、私にはどうしようも……ないのにっ……ヒドい! あんなこと、教えないでよっ」


石を振り上げた私の腕を、間近まで歩み寄った清十郎がつかんだ。



(※この人たちは物語中の達人です。人に向かって石を投げると大怪我をしてとても危ないので、よい子は絶対にマネをしないでくださいね)
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