恋口の切りかた
「うむ。漣太郎は──そなたに無礼を働いたこっちのほうだ」

「オレが漣太郎だ、文句あるか」


父上が説明して、漣太郎が何やら胸を張った。


「馬鹿者! そんな名乗り方があるか! ……本当にすみませんな、余左衛門殿」

「ああ、いやいや!
武芸に秀でた結城家のご当主となられる身。
このくらいの元気はあって結構」


などと、父上と大河様が言葉を交わしていると──



風佳が、今度は真っ青になった。



「そ……そんな──」


風佳は今にも泣き出しそうな様子で、漣太郎を見た。


「い、嫌です、わたくし……」

「これ、なにを言い出すのだ風佳」

「嫌ですぅ……」


泣き出しそう──ではなく実際に、

困った顔の大河様のそばで、
風佳はしくしく泣き出してしまった。
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