恋口の切りかた
「我が妹は、幼少の頃より剣の道を志し、私と共に競い、学んで参りました」


エン──?


何を言い出したのだろうという顔になるお殿様や私の前で、円士郎はそう語って、


「幼き日に孤児となってからは、結城家の娘として我が父より教えを受け、先代の殿の妹でもある我が母が愛情を注ぎ、私も──」


そこまで言って、円士郎は少し言葉を切って、


「私も、本当の家族と思って大切に守り慈しんで参りました」


エン……

押し込めていた思いが、私の胸の中に見る見る広がった。


「このように、男相手にも引けを取らない剣の才能を持っておりますが、
今もなお、深く傷ついた心を抱えたまま、健気に生きている娘です」


円士郎と出会ってからこれまでの、数々の思い出が、

きらきらと、

走馬燈のように脳裏を過ぎていく。


「とても優しい、春の雪解け水のような澄んだ心の娘です」


円士郎は、私の横で朗々たる声を響かせた。


「私にとって彼女は、この世の何にも代え難き宝でございました」


やだ……!

エン──やっぱり、私……
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