恋口の切りかた
「不慣れな城の中で、妹が不安な思いや寂しい思いをしないか……私にはそれのみが気がかりでございます。

殿はご気性のお優しい方。
どうか、そのお優しいお心でもって彼女に御接し下さいませ。決して彼女をないがしろになどされませぬよう。どうか……!

彼女がいつも笑顔で、幸せに過ごすことができますよう。

それが、私のただ一つの望みでございます」


そう言い放った円士郎の横で、私は今にもこぼれおちそうな涙を懸命にこらえた。


諦めるなんてできない。

忘れるなんてできない。

過去になんてできない。


離れたくないよぉ……エン──!
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