恋口の切りかた
「初名から……どうしてもと言われては、話を進めるより他はなかった」


初名(はつな)──というのは、お殿様の義理の妹に当たる初姫様の本当のお名前だ。



「昼間、試合の後で……『彼』の言葉を聞いて、わかったよ」



お殿様は、じっと私の顔を覗き込んで──私にとってこの世の誰よりも愛しい人の名を口にした。



「お前の思う相手は、兄の円士郎だろう?」
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