恋口の切りかた
私はがたがた震えながらお殿様を見つめた。

私のせいで、
私との仲が知られて、

円士郎が酷い目に遭わされると思うと、途方に暮れた。


「やっぱりか」


私の表情を見たお殿様はそう言って、


「だから、心配するなって。

そんな泣きそうな顔にならなくても、円士郎を咎めたりはしないよ」


優しい微笑みを作ってそんな言葉を口にした。


どういうことなのかわからなかった。

自分の側室にした娘に、他に思い人がいて、
しかもそのせいで、よりにもよって最初の夜に閨を飛び出して半裸で城中を逃げ回ったなんて、

どう考えてもお殿様が許すとは思えない。


戸惑う私に、お殿様は、

「留玖、円士郎に会いたいか?」

と、訊いた。


「俺ではなく、円士郎に抱かれて眠りたいか?」




そんなの──



答えはわかりきっている。
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