恋口の切りかた
言葉を失ったように、左馬允が俺を見つめて、



ふと、



自分よりも背の低い、
昔から女のように華奢だったこの美青年の姿に、俺は奇妙な既視感を覚えた。



「なあ、あんた──前に、どこかで俺と会ったことねえか?」


俺が尋ねると、左馬允は不思議そうに首を傾げた。


「そりゃ……会ってるだろ? 円士郎は俺に目通りできる身分なんだし、少なかったけど……晴蔵に連れられて円士郎が城に来た時に、何度かさ」

「いや、そうじゃなくてよ」


思い出せそうで思い出せないような、もどかしい感覚があった。


「なんか……もっと昔に会ってるような……城の中じゃねえ場所で──」


俺が言うと、なぜか左馬允の表情が強ばった。


「俺が、五つか六つくらいの時かなァ……どこかの屋敷だったような……」

「さあ。俺には覚えがないけど」

左馬允は早口で言った。

「俺が先代の養子になる前に、真木瀬の屋敷で会ったことがあったかもしれないな」

「あァ、そっか……あれ、御三家の屋敷だったのかな……」
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