恋口の切りかた
「それで──もし、円士郎が見つかったら……」

「ただではすまないな」

「そんな……」

視線を落とした私に、大丈夫、と殿は力強く言った。

「その時のことも、ちゃんと考えてある。ま、見つからないのが一番だけれどね。
それに、留玖が身ごもった場合も──うまく隠して産めるようにしてあげるから」

「えっ……」

私は硬直した。

「身ごもった場合って……」

もごもごと言うと、

「もちろん、円士郎の子をだよ」

「えっ……? ええっと……」

「夜に忍んで来るのを許すって言うのは、そういうことだろ?」

赤くなっている私に、あのとき殿は吹き出しながらそう言って──





「って……俺から持ちかけた話なのに、一言も円士郎に伝えられないとは──すまないな」

殿はがっくりとうなだれた。
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