恋口の切りかた
「円士郎がまさか、あそこまで固い決意でお前を手放していたとはね」

殿は、昼間の円士郎の様子を私に語って、

「彼に圧倒されて、切り出せなかった」

と言った。


「いい男だな、円士郎は。留玖が心底惚れ抜くのもわかるよ」


殿は優しい微笑を浮かべて私を見つめた。


エン……。


私はまた涙がこみ上げて、
締めつけられるような胸を押さえた。


「殿は……どうして、私とこんな取り引きをしてくださるんですか?」

私は温かい涙が溢れる目元を寝間着の袖で押さえながら、不思議に思っていたことを尋ねてみた。

「私とエンのことを、こんなに親身になって考えてくださるなんて……」

怖々口にすると、くすっと柔らかな笑みが返ってきて、


彼の口からは、驚くべき言葉が出てきた。


「俺にも……許されない相手がいるから」
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