恋口の切りかた
たとえ妾としてでも──
好きな人と一緒に過ごせる時間があるということは、今の私のこの状況に比べたらどれだけ幸せなことだろうと思った。


けれど、私を見つめる初姫様は表情を険しくした。

「それは本心か? 本当にそばにいられるだけでよいのか?」

初姫様はそんなことを仰って、


「今となってはもはや叶わぬことではあるが──留玖殿は、円士郎殿の正室になりたいとは一度も思わなかったのか?」


と、私の顔を覗き込んで言った。


円士郎の正室に──




そんな──恐れ多いこと──


という考えと、


エンのお嫁さんになりたいな


いつかの晩に一人で思ったこととが胸の中で交錯して、私は口をつぐんだ。


「できることならば、わらわは──」


初姫様は私から目を逸らして小さく吐息を漏らした。


「こんな形でも、側室でもなく──殿の正室になりたかった……」


私はびっくりして、初姫様の顔を見た。

「こんな体で何を言うかと軽蔑するか?」

「い……いえ」

私は慌てて頭を振って、
初姫様は私に向かってくすっと笑った。
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