恋口の切りかた
胸を突かれた。


淡々と語る初姫様は苦しそうな目をしていて、

けれどその眼差しからは、秘めた強さのようなものが伝わってきた。


「だからわらわは、義妹としてできる限り殿の支えになろうと思っておる。
いくらこの体を嘆こうと──仕方のないことだからな」


これが生粋の武家の姫君の強さなのだろうか。


「初姫様は、お慕いする方の身分が……高くなければと思ったことはないのですか?」


問わずにはいられなかった私のこの質問には、


「ない」


きっぱりとした迷いのない答えが返ってきた。


「ふふ。確かに、子が産めぬ体でも家臣の妻にならばなれるかもしれぬな。

しかし、この国を治める方を心からお慕いするようになったことは──わらわの誇りじゃ」


惚れる相手を選べたら楽なのに──

昨晩、殿の口から放たれたその言葉とは真逆の内容だった。


衝撃を受けて立ち尽くす私に、「それに」と初姫様は悲しそうにつけ加えた。

「わらわは──ただ子が産めぬというだけではなくての……どのみち、この忌まわしい体では家臣の妻にもなれぬ」

初姫様はそれ以上は何も語らず、
私も尋ねてはいけないことのような気がして、詳しくは訊かなかったけれど、

やはり何かご病気を抱えてらっしゃるという口振りだった。
< 1,922 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop