恋口の切りかた
円士郎たちに、すぐにこのことを伝えたかったけれど──

しかし今の私は、

円士郎にも、
青文にも、
隼人にも、

鬼之介にも、
宗助にも、
霊子にも、

もう彼らの誰とも自由に会うことができないのだと思い出して、

改めて、一人きりにされたような孤独を味わった。



その夜、部屋の中で一人、

結城家から大切に持ってきた木箱を開けて、

蝋燭の光の中で、中の銀色の輝きを取り出した。


円士郎がお祝いだと言って私にくれた
蓮の花のかんざしは奥でも時々使っているけれど


桜の花の透かし細工のかんざし。


これだけは、奥に上がってから一度もつけずに大事にしまったままだった。

円士郎のためだけに使いたかったから……

円士郎と会う時だけにつけていたかったから……


でも、再びこれを差して円士郎と会うことができる日が来るのか──

殿はああ言って下さっていたけれど、私には不安だった。



銀色の桜を見つめていたら、昼間の初姫様の言葉が蘇った。



ただおそばにいて、幸せを与えてもらうだけの立場ではなく、
できることならば、正室としてお慕いする方の支えとなりたい。

留玖殿は、そう考えたことはなかったのか?
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