恋口の切りかた
エン……!


涙がぽたぽたと、銀のかんざしの上に落ちた。


ごめんなさい、エン……!


どうして私、はぐらかし続けたんだろう。


エンの気持ちと
自分の気持ちを
ちゃんと受け止めて、

初姫様のように向き合うべきだった。


どうして、逃げ続けたんだろう──!





もし、もし……私が、桜の下で、エンのお嫁さんになりたいって言ってたら……

それで、円士郎と確かな将来の約束を交わしていたら──父上も、側室の話は断れたと言っていたのに──!





もう、遅い。

もう、取り返しがつかない──。
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