恋口の切りかた
「海野もまた有能な男だと聞いてはいるんだけどね。
青文とこんな形で対立関係になるなんてな……」

左馬允は女のような眉を寄せて、眉間に皺を作った。

「留玖を俺の側室にするよう、義母上たちに働きかけたのも彼だそうだし。
彼女を見出すなんて、確かに海野も人を見る目を持ってると思うよ。

まあ……それは結果的に、円士郎たちには申し訳ないことになったと思うけど」


俺は凍りついた。


「な……なに?」


留玖を、左馬允の側室にするように働きかけた……?


「海野清十郎が──留玖を──?」


愕然としながら、俺は思い出した。


親父殿の江戸からの文を握りつぶした者がいる──


そんな真似ができる者は限られる。

では、それもあいつが……?


決まっている。

あいつがやったのだ。


すうっと血の気が引いていくのを感じた。


あの野郎──!!


両手を握りしめる俺に、

「なあ、円士郎」と、左馬允は何やら神妙な面持ちで口を開いた。

「その──留玖のことなんだけど……彼女と会いたいのなら、俺は構わないよ」

「……え?」

俺は一瞬、何を言われたのかわからずに、左馬允の顔を見返した。
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