恋口の切りかた
──ええ?

それはちょっと予想外の理由だ。

男の着物のほうがカッコイイとか……そういう理由じゃあないのかよ。


留玖の声音は、なんだかすねているように聞こえた。


「似合わねえ……かな?」

「似合わないよっ!」


俺の言葉にも留玖はムキになって言い返す。

俺は、初めて留玖の小袖(こそで)姿を見た時のことを思い出した。


うーん、そうかァ──?


「オレは、そんなに悪かねーと思ったけどな……」

「…………」

と言うか、あの時は素直にかわいいと思ったものだが──。


しばしの沈黙のあと、

「……大河様のお嬢様は──」

壁の向こうからは、消え入りそうな声が返ってきた。


「風佳様は……もっと、ずっときれいだった……」
< 197 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop