恋口の切りかた
間違いない。

何度も夜に稽古で手合わせしてきた。


あれは──あの男の
刀の構え、
動き、
身のこなしだった──


「信じてください! 海野清十郎も二刀流を使うんです!」


私は殿と父上にそう伝えたけれど、


「だが、賊が残した脇差しは円士郎のものだ」


父上は静かな口調でそう言った。


「留玖、顔が見えぬ人影に対するお前の証言と、この脇差し、
どちらが証拠となり得るか──わかるな?」


私は愕然として──

「でもっ……」

「殿は、賊と刃を交えましたか?」

反論しようとしたけれど聞いてもらえなくて、父上は淡々と殿にそう尋ねた。

「うむ……数度、交えた」

「よくぞご無事で」

父上は微笑んで、

「相手の太刀筋は愚息のものと比べていかがでしたか」

と、尋ねた。

「留玖の言では不足でも、殿の証言となれば言葉の重さが違います」


私は弾かれたように殿の顔を見た。

そうだ。

殿も円士郎を城に呼んで、何度か手合わせをしたと言っていた。

固唾を呑んで見守る私の前で、


「それは──」


しかし殿は言い淀み、首を横に振った。


「すまぬ、恥ずかしいことだが無我夢中で……夜で暗かったし、私にはあれで相手の判別などつかぬ」

殿は青い顔をしたままで、そう答えた。
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