恋口の切りかた
まあ、留玖とあの娘を比べてもしかたないんだが──



留玖は俺の妹で

あの子は許嫁だ。



でも──いや、無意識にどこかで比べていたからこそ──なのか?


俺はあの娘に何だかイライラした。


俺が昼間見たのは多分あの娘のほんの一部分で、
実際には、武家の娘なのだから、しっかりしたところもあるのだろう。


が、


「キレイなだけで、なんか弱そうだし──クソ、あんなのがオレの許嫁かよ」


そんな印象を持った。

──後半は、まあ照れくささ半分のセリフで、
無論、そこまで大河の娘に不満を持ったワケではないが。



つうか何で俺、こんな場所でこんなこと留玖と話してるんだよ!?

しかもすっぱだかで……!



そろそろ出ようとタライから身を浮かせたら、

「……レンちゃんは、あの子のこと、今日まで知らなかったの?」

壁の向こうから留玖がそんなことを言うので
俺は再びタライに浸かる。
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