恋口の切りかた
「理解不能だろうが。
それが、円士郎様たちの生きる武士の世界だ」


青文──いや、遊水か──は、先刻の俺への当てつけのようにそう吐き捨てて、

俺は二の句が継げず、開いた口をしぶしぶ閉じた。


理不尽だと思う。

帯刀が恨む気持ちもわかる気がしたが──


だとすると、帯刀は
親父殿だけではなく、左馬允やこの国自体に恨みを持っていたのではないか?

ハッとする。

俺たちは、そんな帯刀の前で、
清十郎たちがこの国をどうにかしようとしているという話をしたのだ。


だとすれば帯刀は、結城家への単純な恨みから俺の下役を辞めた、というだけではなく、

兄の無念を晴らすために清十郎たちに乗った、ということになる──。


俺は溜息を吐いて、

「清十郎のことを調べ直すために、氷坂の家中を探ってたんだったな。
何かわかったか?」

本題について尋ねた。

「まあ、色々とねェ」

にやついているような声音で青文がそう返してきて、


「そうか。
だったら聞くが──あいつは本当に、殿様の子供の氷坂清十郎本人か?」


俺は、胸の中にずっとあった疑念を口にした。
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