恋口の切りかた
「ほう」

覆面の下から、青文は面白がるような声を出した。

「何が円士郎様にその疑問を再び口にさせたのか、是非とも聞きたいねえ」


青文の態度で、


当たりか──


俺は、やはりと思う。


やはり、「そういうこと」なのか──


あのとき──


怒りに我を忘れて、
親父殿や殿様の前で清十郎につかみかかった時──


俺の手が清十郎の着物の襟をつかみ、大きく開いた襟から肌が見えた。


一瞬だったが、はだけた着物から覗く右胸に俺が確かに見たもの──


殿様の四男だという男の右胸の上には、絶対に有り得ないもの──




「三本足のカラスがあったんだよ……!」




この目に焼きついたのは、禍々しい彫り物だった。

あの蜃蛟の伝九郎の腕にあったものと同じ──




「海野清十郎の右胸には、盗賊『闇鴉』の一味の証である──八咫烏の彫り物があったんだ!」
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