恋口の切りかた
【剣】
結城家の養女になってから、一人で眠るたび何度も見た。
村の家路を辿る夢……
あの村で家族と今も暮らしている夢……
あるいは幼い頃のまま時が止まって、家族の手伝いをしている自分の夢……
目覚めると一瞬、自分がどこにいるのかわからなくて、隣に眠っているはずの兄弟姉妹の姿を探して、
そして武家の子になったのだと思い出して、
いつも
少し悲しくて、
少し懐かしい夢の余韻に浸っていた。
けれどその夢はもう見ない。
円士郎と離ればなれになって
そして彼が謀反の濡れ衣を着せられて姿を消してから──
私が見るのは円士郎の夢ばかりになった。
円士郎と剣の稽古をしている夢……
今も結城家にいて、円士郎が隣にいて、笑い合っている夢……
それから
円士郎に抱きしめられて、彼の腕の中で、言えなかった言葉を彼に告げる夢……
エンのお嫁さんになりたいと、ちゃんと伝える夢……
彼が何て答えてくれるのか、
いつもそこはぼやけていて、
わからなくて……
奥御殿で目が覚めるたび、ほっぺたが濡れていた。
ただ悲しくて、
つらくて、
円士郎に会いたくて──
枕元に置いた大切な銀の桜のかんざしを胸に抱いて、私は泣いて、