恋口の切りかた
それでも、自分に言い聞かせた。


彼はまだ死んだわけじゃない。

どこかでちゃんと生きている。


泣いている場合じゃない。

今、円士郎のために私ができることをしなくては──


そう思って、

「エンを……円士郎を助けて下さい!
謀反なんて濡れ衣です」

あれから毎日、私は殿に必死に訴え続けたけれど、

「俺にもそれはわかっている。
だが証拠がある限り、家臣たちを納得させることはできない」

殿もまた、円士郎の無実を信じてくれていて、

だからこそ、
それでもどうしようもないという返答は絶望的だった。


「すまないな、留玖。
だが青文も晴蔵も蟄居中の今──この状況で俺一人が円士郎を庇う発言をしても、家臣たちの信頼を失う結果にしかならない」

殿は疲れたようにそう言って──



──そうなのだ。

円士郎が謀反の嫌疑をかけられたまま行方を眩ませて、父上が蟄居の身となった。

初姫様が以前仰った殿にとっての両腕がまさに今、もがれてしまったのだ。


事態は清十郎の思惑通りの方向に進んでいるように思えて、私はぞっとした。


しかも、

春告院様に殿と初姫様の関係が知れたせいで、
初姫様は奥御殿から出され、別宅に移された。


最愛の姫君からも引き離されて、殿は完全に孤立した状態にされてしまっていた。
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