恋口の切りかた
どうして留玖が女の格好をいやがって
男装するようになったのか、

雨の中、壁ごしに交わした会話の意味も

俺には何が何だかわからなかったのだが──



ちょっと残念だけど
留玖が女物を着たくないならいいか、と

そんな風に思った程度だった。




後になって振り返ると、

あの『金魚屋』に出会う前の俺は本当に

女心というものについては笑えるくらい疎(うと)かったと思う。





ただあの日のザアザアと降りしきる外の雨の音と、


好きな人と一緒になれないの?


と言った留玖の言葉が、

妙に耳に残っていた。

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