恋口の切りかた
私には何のことなのかわからなかったけれど、

青文のセリフに無気味に微笑したままの菊田や藤岡たちにとっては、今のやり取りは会話として成立しているということらしかった。


「だが」と、覆面家老は独特のボソボソした低い喋り方の中に、やや険しい響きを滲ませた。


「この先についても、私と同じお考えならば──今のこの状況は貴殿らにとっても好ましくはないはず」


御家老は、私にはやっぱりよくわからないそんなことを口にして、
へたり込んで泣いていた私の傍らに屈み込んだ。


「おつるぎ様、ご同行願えますか」

「……ふえ?」

「円士郎様が向かったのは、海野の屋敷です。あそこは今、盗賊の巣窟」


私は濡れた目を何度も瞬いた。

そのそばで、青文が殿を見上げた。


「殿、円士郎様をお救いするため──おつるぎ様をしばしお借りしたいが、宜しいか」



円士郎を救うため──



その言葉に、私の胸はドクンと大きく鳴った。
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