恋口の切りかた
「このままでは、円士郎様は雪辱を果たした後、
その場でご自害して果ててしまうでしょう」


覆面頭巾の下の口から放たれたその内容に、私の背中は冷たくなる。


「円士郎様を死なせるわけには参りません」


青文はキッパリとした口調で、殿にそう告げて、

殿は私と同じように戸惑った様子を見せたけれど、私とは違ってすぐに表情を引き締めた。


「わかった。お前の言うことであれば──好きにするがよい」


そう言う左馬允様には、やはり一国の主君たる風格があって、


「有り難き幸せ」


そんな言葉を交わす覆面家老の様子からは、
彼らの間にある揺るぎない信頼関係が窺えた。


「おつるぎ様」


覆面頭巾に覆われた顔は、再び私に向き直った。



「円士郎様を助けたいですか?」



エンを──
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