恋口の切りかた
円士郎と留玖 の 章
一、盗賊
【円】
海野家へと向かう道すがら、
兄を切腹で失って、
あるいはあやうく謀殺されかかって
なお、こうして俺につき合ってくれる帯刀と隼人に、俺は青文から聞いたこの国の秘密と闇鴉の一味との因縁を話した。
俺にとっては二人に対する精一杯の誠意だった。
こんなことを知ってしまえば、それこそ口封じに殺されかねない内容ではあるが──そこは青文に何とかしてもらうことにする。
「殿様が替え玉……!?」
話を聞いて、隼人は真っ青になり
「って、やっぱりとんでもねーヤブヘビじゃねーかよ!」
走りながら頭を抱えた。
「では、我が兄は──護衛についていながら、主君を目の前で盗賊に殺される失態を犯したということか……」
帯刀もまた愕然とした声を出した。
「ならば神崎家は、兄の切腹と減俸で済んだこと、結城様に感謝せねばならんな」
帯刀は奥歯をぎりぎりと鳴らして、
「貴様に加勢するこれ以上の理由はないな」
と、俺に言った。
「何としても闇鴉の一味を討ち果たし、この俺が兄の不忠義を償い、無念を晴らす……!」
「ま、俺もここまで誇りを傷つけられて、黙ってる気はねー」
隼人もそれにうなずいて、
ほどなくして海野家の長屋門の前にたどり着いた俺たちを待っていたのは、
火傷の御家老の変装をとき、暗夜霧夜の姿に早変わりした与一だった。