恋口の切りかた
「夜叉之助たちは中だよ」
与一はそう言って海野家の屋敷を示して、
墨染めの着物に身を包んだ散切り頭の男を見て、隼人と帯刀が怪訝(けげん)そうな顔になった。
「こいつは渡世人だが、元闇鴉の一味でな、今は──盗賊改めの犬だ」
俺は簡単にそう説明して──
二人が目を丸くし、与一が嫌そうな顔になった。
「こちとら目明かしとは違うんだ、犬って言い方はやめにしてほしいね」
「何かあった時は密偵として働いてもらうって話だっただろ」
この町を裏で牛耳る鵺の二代目、しかも過去に盗賊一味だったという与一は、盗賊改めの捜査にとってはまたとない心強い味方になる。
白輝血との一件で、留玖を危険にさらしたツケとして、
俺が与一に承諾させたのが──必要に応じて盗賊改めに協力してもらうことだった。
「俺が今ここにいるのは、若様、あんた個人のためだ。盗賊改めは関係ない」
与一は不機嫌にそう言って、
「おい、討ち入るならボクも連れて行け」
近くの道の角から、ぬうっと姿を現したマント姿の鎧武者に俺は目を見張った。
「鬼之介!?」
甲冑を着込み、
手には槍を持って、
目にはごおぐるをつけた完全装備の怪しすぎる格好の男は
わしゃわしゃガシャガシャと音を立てて歩み寄って来て、
「てめえは無関係だろうが! なんで、ここに──」
「霊子殿が、この屋敷に忍び込んだまま戻って来ないのだ」
声を上げた俺に、鬼之介はそんなことを言った。
与一はそう言って海野家の屋敷を示して、
墨染めの着物に身を包んだ散切り頭の男を見て、隼人と帯刀が怪訝(けげん)そうな顔になった。
「こいつは渡世人だが、元闇鴉の一味でな、今は──盗賊改めの犬だ」
俺は簡単にそう説明して──
二人が目を丸くし、与一が嫌そうな顔になった。
「こちとら目明かしとは違うんだ、犬って言い方はやめにしてほしいね」
「何かあった時は密偵として働いてもらうって話だっただろ」
この町を裏で牛耳る鵺の二代目、しかも過去に盗賊一味だったという与一は、盗賊改めの捜査にとってはまたとない心強い味方になる。
白輝血との一件で、留玖を危険にさらしたツケとして、
俺が与一に承諾させたのが──必要に応じて盗賊改めに協力してもらうことだった。
「俺が今ここにいるのは、若様、あんた個人のためだ。盗賊改めは関係ない」
与一は不機嫌にそう言って、
「おい、討ち入るならボクも連れて行け」
近くの道の角から、ぬうっと姿を現したマント姿の鎧武者に俺は目を見張った。
「鬼之介!?」
甲冑を着込み、
手には槍を持って、
目にはごおぐるをつけた完全装備の怪しすぎる格好の男は
わしゃわしゃガシャガシャと音を立てて歩み寄って来て、
「てめえは無関係だろうが! なんで、ここに──」
「霊子殿が、この屋敷に忍び込んだまま戻って来ないのだ」
声を上げた俺に、鬼之介はそんなことを言った。