恋口の切りかた
彼の気持ちはわからなくはなかったが……
「くそ……! 何やってんだよ、冬馬のやつ……!」
冬馬は夜叉之助の実の弟だ。
夜叉之助が冬馬をまだ何かに利用しようとしているのならば、すぐに殺されたりはしていないはず……。
俺は己に必死に言い聞かせて、あせる心を落ち着かせようとした。
「とにかく、中に入るぞ」
俺は固く閉ざされた門扉をにらんで、
「誰かが門を乗り越えて、中からかんぬきを外すしかねえな」
こういう時、宗助がいればと思った。
しかし宗助が負った傷はひどく、一月以上が経過した今も回復には至っていないと聞かされていた。
誰が行くかと考えていると、
「ふふふ……その必要はない」
そんなことを言って歩み出たのは鬼之介だった。
「どうやらこいつの出番だな」
言いつつ、鬼之介はマントの下から何やら取り出して──
「何だそりゃ!? 馬上筒か?」
俺はその奇妙な形状の物体を見て眉を寄せた。
馬上筒というのは種子島を小さくしたような武器で、戦国の世の末期に考案されたものだ。
その名の通り馬上の武士が用いた、片手で扱える火縄銃である。
だが鬼之介が手にしているものは、馬上筒とは異なり六つの銃身を束ねたような形状をしていた。
「くそ……! 何やってんだよ、冬馬のやつ……!」
冬馬は夜叉之助の実の弟だ。
夜叉之助が冬馬をまだ何かに利用しようとしているのならば、すぐに殺されたりはしていないはず……。
俺は己に必死に言い聞かせて、あせる心を落ち着かせようとした。
「とにかく、中に入るぞ」
俺は固く閉ざされた門扉をにらんで、
「誰かが門を乗り越えて、中からかんぬきを外すしかねえな」
こういう時、宗助がいればと思った。
しかし宗助が負った傷はひどく、一月以上が経過した今も回復には至っていないと聞かされていた。
誰が行くかと考えていると、
「ふふふ……その必要はない」
そんなことを言って歩み出たのは鬼之介だった。
「どうやらこいつの出番だな」
言いつつ、鬼之介はマントの下から何やら取り出して──
「何だそりゃ!? 馬上筒か?」
俺はその奇妙な形状の物体を見て眉を寄せた。
馬上筒というのは種子島を小さくしたような武器で、戦国の世の末期に考案されたものだ。
その名の通り馬上の武士が用いた、片手で扱える火縄銃である。
だが鬼之介が手にしているものは、馬上筒とは異なり六つの銃身を束ねたような形状をしていた。