恋口の切りかた
「ふん! 馬上筒などという、護身の役にしか立たない貧弱なモノと一緒にしないでもらいたいなッ」

鬼之介はそう言うと、手にしていた槍を俺に押しつけて、


片手で扱えそうな形状をしたその鉄砲を両手でかまえ、

いきなり銃身を門扉に向けて引き金を引いた。


パン、という乾いた音がするかと思いきや──


ドン、と形容するほうが相応しい派手な音が響き渡った。


しかも立て続けに六回。



六連射!?



俺たちはあんぐりと口を開けて、分厚い木製の門扉にきれいに円を描いて六つの穴を空けたその鉄砲を見つめた。


「何だよ、その武器は──」


着火の動作がなかった。

いや、そもそも鬼之介が手にしている武器には火縄がついていない。


パラパラと、金属で出来た小さな筒状のものが鉄砲から排出されて落ち、地面に散らばって硬質な音を立てた。


ふう、と息を吐いて、鬼之介は軽く肩を回し、

「馬上筒のごとき形状に、種子島をしのぐ威力(*)を持たせた鉄砲だ」

と言った。

「人間に当たった時の威力はこんなものではないぞ」


まさか、それって──

思いついて、俺は口にした。


「青文から渡された図面から作った武器か!?」



(*馬上筒と種子島銃の威力:種子島銃が殺傷距離200mを誇り、甲冑を貫通して人体に致命傷を負わせる威力を持っていたのに対し、馬上筒は殺傷距離が5mそこそこ、射程距離自体が30mという貧弱なものだったらしい。

※ちなみに種子島の確実殺傷距離は50mほど)
< 2,097 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop