恋口の切りかた
ふっくくく……、と鬼之介はふくみ笑いをして、


「その通りだ! 人形斎はやはり天才だな。

こいつは早合(*)を改良して、金属の筒に鉛の弾と火薬をつめた包みをあらかじめ作っておいて、その包みに衝撃を与えることで着火する仕組みをほどこし、弾を撃ち出せるようにしたものだ(*)。

おかげで弾を込める動作にかかる時間がほとんど必要ない。

……やはり本当に、彼も果心居士と名乗った男に出会っていたのではないかと思いたくなるが……。

もっとも、受け取った図面の鉄砲は単発式で、一回ずつしか撃てない仕組みだったがなッ」


鎧武者は得意げに胸を張った。


「井上流の五雷神機(*)の発想から、六つの銃身が回転して連射できるようにボクが改良した!

さらには弾の先端にも特殊な加工を行い、
金属の筒には細工をほどこして使い終わった金属の筒を自動で排出し、
ここに入れておいた次の弾の包みがすぐさま装填される仕組みだ!

つまり最大で十二連射が可能なのだッ」


鬼之介はその鉄砲の部位を指さしながら、嬉々とした様子でそんな説明をした。


「名づけて『二連式六雷神機』というところだ!」


ほほう?


「へえ、面白そうだな。俺にも撃たせろよ」

興味をそそられて俺が言うと、自信に満ちあふれていた鬼之介の表情がやや曇った。



(*早合:火縄銃に素早く次弾を装填するため、木や紙の筒の中に弾丸と火薬をつめた弾薬包。織田信長の軍が使用したと言われる)

(*金属の筒に~:つまり鬼之介は図面に従って、なんと現在の銃に使われている薬莢と雷管を備えた実包とほぼ同じものを作ってしまったらしい)

(*井上流の五雷神機:幕府の鉄砲方には、現在のリボルバーとは異なり、銃身自体が回転する連発銃を開発した井上外記という人がいた)
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