恋口の切りかた
「いやいやいやいや普通じゃねえよ?」

鞘に納めた刀を持って、
二人でまだ陽の高い屋敷内をうろうろ見て回りながら、
漣太郎は首を横に振った。


「つうか武士、どれだけ物騒だよ!」


漣太郎はあきれて、

「そりゃ、切捨御免はあるけど──こんなのはあの親父殿の価値観だろ」と言った。

「結城家の価値観、とも言えるけど」


価値観……。


結城家がどういう家なのかイマイチわからず、私は首をかしげた。


戦国の世から続く武芸の家だ、ということは知っている。

でも今は天下太平のご時世、
群雄割拠の戦乱の世ではない。


虹庵先生は、最近は剣術も実戦性ではなく
「型」がもてはやされるようになったのだと言っていた。


そんな中、鏡神流では、
今も実戦重視の剣術を守っているとは聞いていたけれど



これでは重視どころか本当に実戦だ。


< 210 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop