恋口の切りかた
庭の池の周りを歩きながら、
漣太郎はやっばりギラギラした目で周囲を見回した。

「上等だ。この家に生まれて良かったぜ」

「ふうーん」

「ふーんって……やっぱ余裕だな『経験者』は」


漣太郎は手にした刀の鞘を肩にポンポン当てながら、私にそう言った。


「見てろよ。オレもこれでお前に追いついてやる」


追いつくと言っても──

私と漣太郎は相変わらず剣術の試合では五分五分で、
稽古でも勝ったり負けたりのくり返しだ。

漣太郎が私に対して引け目のようなものを感じる理由なんてないのに。


私はずしりと重い刀を見つめた。



人を斬ることは──

──そんなに重大なことなのかな?



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