恋口の切りかた
そんな──
私自身が、
こんな風に誰かから激しい憎悪を向けられるなんて、
こんな風に誰かから大切な人を奪っていたなんて、
考えたこともなくて、
私はただただ立ちすくむことしかできなかった。
「あの村に行ったまま、おとっつぁんは帰って来なくて、
返り討ちにあって斬り殺されたって聞いて、
それが、あたしと年の変わらない子供の仕業だって聞いて──驚いたわ。
しかも偉い御武家様の家に引き取られて、農民の子の分際で養女になったなんて──いったいどんな娘なんだろうって思った」
おひさは大げさな仕草で、派手な着物の肩をすくめて見せた。
「たった一人の家族を失って、
あたしはおとっつぁんが『傘化け』の定衛門って名乗っていた時代に世話になっていた『闇鴉』の一味を頼った。
そこで結城家と一味との因縁を聞かされて、あたしは復讐のために彼らと組んで、女中として結城家に潜り込んだのよ。
そして、まんまとこの国の御三家の娘の座に納まって、何不自由なくのうのうと暮らしているあんたを見た……!」
たっぷりと恨みのこもった視線が、射抜くようにこっちを向いた。