恋口の切りかた
──違う!


浮かんできた考えを、私は慌てて振りはらう。


「違うだろうが! なに言ってんだ留玖!」

「そんな言葉、真に受けんなよ!」


円士郎の声が胸の中に響いたような気がした。


違う!

無抵抗なまま殺されていたら良かったなんて、そんなわけない。


もしもあのまま死んでいたら、父上にも母上にもおりつ様にも雪丸にも

風佳にも
遊水にも
宗助にも
鬼之介にも
亜鳥にも
隼人にも
帯刀にも
与一にも……

出会えなかった。


あの後の私の人生で知り合ったかけがえのない人たちとの時間は存在していなかった。


そして、大好きな円士郎と過ごした宝物のような日々も、あの晩で終わっていた。

共にこうして成長することも、彼に恋する温かい気持ちを知ることもなかった。


それでいいわけがない!



でも、

だったら、

どうしたら良かったのかな……


どうなっていたら、良かったのかな……


私にはわからなくて、

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