恋口の切りかた
こういうのを大人の女の人の色気って言うのかなあ……。

武器を手にした斬り合いの場にあってもどこか優美でどきどきするような女の人の仕草や言葉を見て、私は少し落ち込んだ。

私だったらいちいちほっぺたが大火事になるような美青年の言動にも、振り回されていないし……。

円士郎だって、きっと本当はこんな綺麗な人が好みなんだろうな。


お化粧のせいなのか切れ長の目元はほんのり赤くて色っぽい。


着ている着物は真っ黒で全然派手じゃないのに、どこか艶(あで)やかで──


私も……
お化粧して女物の着物を着たら、こんな風になれるのかな……。


たまには女の格好もしろよ。


いつだったか、円士郎は私にそう言っていた。

私が与一に着替えさせられた時は怒っていたけれど──


髪も結って、
お化粧して、
女の着物を着て、

私も一度くらいエンの前で、ちゃんと女の格好をしたところを見せたかった。


エン……やっぱりこのまま終わりだなんて、私は嫌だよ……。


そんなことを考えていたら、

「おつるぎ様は早く円士郎様のところに行ってください」

金髪の美青年は、女の人に向けていた目とは違って、私にはいつもの優しい緑色の瞳で言った。

私はちょっとだけホッとして、


「国崩しの断蔵は──色々な意味で俺以外の人間の手に余る」


青文は綺麗な女の人を見つめて、緑の双眸を鋭くした。


色々な意味で……?

どういうことなのだろうと私は首を捻った。


そう言えば、以前に盗賊改めの役宅で会った時にも、この人は国崩しの断蔵のことを随分と警戒していたようだけれど──。
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