恋口の切りかた
「おっ? どうやらこっちも決着が着いたようだな」

裏庭に軽い口調の声が響いて、円士郎が首を動かした。

私もそちらを見ると──


私が来たのとは反対側の方向から、抜き身の小太刀を手にして狐目の侍が歩いてくるところだった。


「隼人、そっちは?」

と、円士郎が尋ねた。

隼人はニッと口元で笑って、「行逢神の平八なら、仕留めたぜ」と言った。


「命までは奪ってねーけど、適当に痛めつけて屋敷の中に転がしてある。

ま、奴の一派には御家老暗殺の疑いがかかってるから、捕まえてもまず間違いなく命はねーだろうけどな。

獄門首だろうが釜ゆでだろうが好きにしやがれと、豪胆にわめいてやがったぞ」


「そうか」

円士郎は頷いて、それから隼人が手にした小太刀を眺めた。


「だったら隼人、悪いがあんたにもう一仕事頼みてえ。

その小太刀じゃなくて、腰の長刀のほうで人が斬れるか?」


私は円士郎をまじまじと見つめた。


「片腕で人の首を切り落とすのは難しいか?

できれば一刀のもとに落として欲しいんだがな」


苦笑を浮かべているような顔で円士郎はそう言って、


「切腹の介錯か」


隼人が真面目な顔になって、その恐ろしい言葉を口にした。
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