恋口の切りかた
「海野喜左衛門様は、無事にお救いしたぞ」

帯刀は縁台の上からそう言って、


「別宅を出る時、下役に命じて役宅に報せをやっておいた。

この屋敷はもう、盗賊改めに囲まれている。生き残った盗賊も今、全員捕縛しているところだ」


と、告げた。


言われてみると、塀の外にもたくさんの人の気配がして、屋敷の中からは捕り物の音がしていた。


円士郎が頷いて、

「帯刀、あんたに頼みてえ」と、裏庭から帯刀を見上げて言った。


「切腹の介錯か。話は聞いていた」

一刀流の達人は、腰の長刀に触れて、抜き放った。

「承ろう。この微助一文字で、貴様の首、過たずに確かに切り落としてやる」

私は息を呑んだ。

「頼む」と言って、円士郎が微笑んで、



帯刀が、刀を手にして縁台から雨の裏庭に降りてきた。
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