恋口の切りかた
温かい手が、私の頬を優しく撫でた。


「お前は、留玖だ」

「る……き……?」

「ああ、俺の妻の留玖だろ」


私は何度も何度も、その言葉を頭の中で繰り返して、


そうだ──。


思い出した。


私は、

大好きなこの人の──

円士郎の──


妻になったんだ……。



世間から認められた妻ではないけれど──。
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