恋口の切りかた
俺の言葉を聞いた藤岡が、ほっ、と鼻で笑った。


「主君たる器とはまた──ようも己の口で言いなさるわい」

「……なにィ!?」

いちいち癇に障る物言いをするジジイに俺がムカッとすると、

「勘違い召されるなよ。
円士郎様が真に主君たる器かどうかが問われるのはこの先じゃ」

と、藤岡は白い眉を片方だけ上げて、こちらが怯むような凄みのある目つきで俺を見た。


「儂は今の円士郎様を、殿の後継の資格ありと見たに過ぎん。
ギリギリでの」


ギリギリでかよ!


「私にもずっと、藤岡殿や菊田様のお考えがどうであるのか、確証は持てなかったのですがね」

青文が覆面頭巾を横に向けて、藤岡たちを見て、

それから首を動かして、ずっと平伏しっぱなしの隼人のほうを見た。
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