恋口の切りかた
六、桜下の選択
【剣】
結城家に帰されても私は円士郎と会うことができなかった。
左馬允様が隠居して、代わりに円士郎がお殿様になって、
お城に行ったまま、彼は戻ってこない。
殿様になってすぐに、
藤岡や菊田と違って本気で夜叉之助の口車に乗って、先君の左馬允様に謀反を起こそうとした者たち全員を、
円士郎は容赦なく粛正した。
何でも家臣の前で、本当ならば荷担した者全員を城の庭に並べて、彼自らの手で撫で斬りにしてやりたいと言い放ったのだそうで、
彼らしいこの行動は家中の人たちを震え上がらせて、
左馬允様とは全く違う、円士郎の気性の激しさを家臣たちに知らしめることになったのだそうだけれど、
父上の話によると、
殿様が入れ替わっただけでも忙しいところを、政務に当たる者の大幅な入れ替えで、お城は連日大わらわなのだそうで、
とてもとても、私が円士郎に会う時間を作ってほしいだなんて、父上に頼めるような様子ではなかった。
エンはきっと、この国のために頑張っているんだ。
我慢しなくちゃいけないんだ。
私は自分に一生懸命言い聞かせて、
円士郎に会えないまま、
一月が過ぎ、
二月が過ぎて──