恋口の切りかた
灯心に灯された黄色い炎が、行灯の薄紅色の和紙を通して
だいだい色の光でお座敷の中を照らしていた。



──なんだ?



なんだろう、何かが先刻までと違う。



夕餉の膳はもう片づけられていて、
りつ様は先程と変わらない様子で行灯の光の中にぼんやりと浮かんでいる。


入り口で突っ立ったままの私を見て、りつ様が怪訝(けげん)そうな顔をした。

「お入りなんし」


何がおかしいのかわからず、すっきりしない気分のまま
私は左手ににぎった刀の感触を確かめてりつ様の向かいに座った。



すると、変な感じが強くなったような気がしたけれど、

この違和感がどこから来るものなのか、やはり判然としなかった。



離れは相変わらずしんと静まりかえっている。

雪丸は、正妻である奈津様と乳母とで面倒を見ることになっているので、
当然夜もここにはいない。


りつ様一人っきりだ。



床の間に、先程の女郎花が飾ってあった。

幸せでありんす、というりつ様の言葉が脳裏によみがえった。
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