恋口の切りかた
「吉原でいつわりの名をもらう前の、わっちの本当の名は『六花』と言うのじゃ」

「リッカ様?」

「そう、六つの花と書いてな」

「六花様」


だから皆、りつ様と呼ぶのかと私は初めて知った。


ここで、りつ様は少女のように無邪気に身を乗り出して、

「留玖殿は晴蔵様をどう思う?」

と聞いた。


何を聞かれているのかわからず私が答えにつまると、

「晴蔵様は本当にいい男じゃ」

と、りつ様は楽しそうに言った。


うーん。


さすがに子供の私は、そういう印象を持ったことはなかったけれど。


整った顔立ちで、たよりがいもあって、温かい人柄で──ちょっと怖い時もあるけれど──

なるほどああいうのが、大人の女の人の言う「いい男」なのかもしれない。
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