恋口の切りかた
祝言は、城を上げた盛大なものではなくて

宴の席は親しい者だけの、本当にささやかなものだったけれど、


敷地に植えられた桜の花が見える宴席で、

時折、風に乗って飛んでくる薄紅色の花びらの中で、


扇を手にして正装した円士郎の隣に、静かに目を伏せて座って、

青文や、隼人、帯刀たちに祝ってもらって、


私はとても幸せだった。



私の横で三三九度の盃を飲み干す円士郎を、どきどきしながらチラチラ盗み見て、


盃が私の手に渡った時、円士郎は横で小さく笑った。

「酒苦手だろ。大丈夫か?」

円士郎は優しい声でそっと囁いてきて、

「このくらい、平気」

私はこくりっと頷いて、いい香りとは裏腹に口の中を突き刺すようなその飲み物を、頑張って喉の奥へと流し込んだ。

幸いにも、ということなのか、緊張して辛さはあんまり感じなかった。


両手で持った盃を口から離して、ふう、と軽く息をついたら、

「留玖」

円士郎が横でまた小さく囁いて、目が合って、


「白無垢、綺麗だぜ」


と、言った。
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