恋口の切りかた
【円】
優しく唇を吸って、
「エン……」
俺の名を呼んで、潤んだ目を向けてくる留玖を見つめて、
艶やかで真っ直ぐな髪を下ろした彼女の姿にどきどきした。
あの日、川辺の桜の下で留玖を見て初めて俺は、
ただかわいい妹のようだった幼なじみの少女が、いつの間にか色っぽくなって、女へと成長していたことを知った。
銀治郎の子分のヤクザ連中がちょっかいを出してくるのも当然だ。
彼女がいつも男装ばかりして過ごしていたため、俺は強く意識してこなかったのだということを思い知らされたが──
留玖は、本当にいい女になっていた。
あれからずっと、
彼女のことを考えるたび、
ただいとおしいと思うだけではなく、俺は熱に浮かされたような気分に陥っていた。
誰にも渡したくない──。
「留玖……」
彼女の名を囁いて、座ったままの彼女を抱きしめた。