恋口の切りかた
俺の胸に顔を埋めて、声を上げて泣く留玖を見下ろして、


「そっか……」


俺はずっと胸の中につかえていた何かがとれたような気分になった。


「エン、私は今日まで、エンにたくさん幸せにしてもらったよ。

家族を失って、なくした分よりもずっとたくさん……」


留玖は泣いていた顔を上げて、濡れたほっぺたで笑顔を作った。


「だから、これからは私もエンを幸せにしたい。

エンが私にくれた分、エンのことも幸せにしたいよ」


「ばか」


俺はそっと、彼女の涙を拭った。


「俺も十分、お前からもらってるよ」


そう言って、

彼女と唇を重ねて、
触れるだけの口づけをして、
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