恋口の切りかた



何の刻くらいだろうか。




また、変な感じがする。

──これは何だろう。



「駆け落ちって……相手の女の人は……」

「捕まってつれもどされたそうじゃ」


私の問いに、りつ様が静かに答えた。




虫の声が聞こえる。




部屋の二面を囲む障子は、明るい月光が透けて白く光っている。

もう一面は壁。

もう一面は──



──襖。

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